ゾロアスター教(2)現代に生きているゾロアスター教

前回、ゾロアスター教について簡単に紹介しました。ユダヤ教やキリスト教以前に誕生した古い中東の宗教です。ゾロアスター教はアケメネス朝で王族の信仰の対象となり、ペルシアを中心に普及していきました。ササン朝ペルシアでは国教となるのでした。しかしながら、ササン朝がイスラム勢力の台頭によって滅びた後、ゾロアスター教は衰退してしまったわけです。現代でもゾロアスター教徒はいます。イランではヤズドという町に多くの信者がいます。またパキスタンやインドに渡った人々の中にも多くいるようです。彼らはパールシー教徒などと呼ばれているようです。

ゾロアスター教が今日の社会に生きている名残りの代表的なものはノウルーズでしょう。3月の春分の日がノウルーズです。ノウは新=英語のnew, ルーズは日です。新しい日=新しい年の意味になります。つまり新年です。イランはイスラムの国です。当然のことですが、イスラム暦を使用しています。が、イランではもう一つの暦がごく普通に使われています。イラン暦というものです。この暦はイスラム暦と同じように西暦622年のヒジュラを紀元とした暦です。イスラム暦はそこから太陰暦でスタートしていますが、イラン暦は太陽暦です。従って、イラン暦の新年は毎年3月の春分の日に始まるのです。ノウルーズはイランだけでなく中東の他の地区、中央アジアの一部の地域でもお祝いするところがあります。イランのノウルーズは日本の正月飾りと同じように定番の飾り物があります。それはハフト・シン(Haft sin)と呼ばれます、ハフトは7で、シンはペルシア語のSです。Sの頭文字のものを7つ揃えるのです。ニンニクやリンゴ、日本のおせちのようにそれぞれに意味があるのです。ユーチューブでもハフト・シンの動画を見ることができます。イスラム世界では新年を祝うということはありませんが、イランではノウルーズの新年を盛大にお祝いするのです。この太陽中心の暦がゾロアスター教の名残なのです。

ノウルーズに子供たちはお年玉をもらいます。エイディというものですが、ちょうど日本のお年玉と一緒です。ノウルーズが近づく年末最後の水曜日にはチャハールシャンベ・スーリーという行事があります。家の近くの広場や路上で枯れ木を燃やして、その上を子供たちがピョンピョン飛び跳ねる行事です。男も女も一緒になって飛び跳ねます。日本でも火の上を歩く行事がありますね。それと同じような年末の行事です。チャハールシャンベというのは水曜日、スーリとは火の炎という意味です。水曜日の行事なのですが、行われるのは火曜日の夜になります。なぜでしょうか。イスラム世界では一日は日没から始まるのです。ですから火曜日の夜はすでに水曜日になっているのです。面白いですね。もっともっとお話ししたいことはありますが、今日はこの辺でさようなら。

 

 

 

 

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