ペルシアの詩人たち

以前にアブー・ヌワースという詩人の『アラブ飲酒詩選』を紹介したことがある。イスラム社会の中でありながら大胆に酒を歌ったものをいくつか紹介した。そしてタイトルを書籍紹介:アブー・ヌワース著『アラブ飲酒詩選』その1としたのであった。だからその2を書かなければならないのである。でも詩と言えば、本場(?)はペルシアであろう。ペルシアつまりイランのことである。そこでちょっと寄り道をすることにしよう。

イラン人が詩を愛することは有名である(日本では知られていないかもしれないが)。数多くの詩人を輩出しており、イラン人は有名な詩人の詩の中のフレーズをいくつも身に着けている。イラン人はお喋りである。スピーチも上手である。そんな彼らから発せられる言葉には詩の引用も多々見られるのである。

代表的な詩人というと、シーラーズのハーフェズとサアディであろう。ゲーテがペルシアの詩人たちを高く評価したこと、そしてその著『西東詩集』の中で「ハーフェズ」という一章を設けてハフェズを絶賛したことで彼の名は世界中で知られるようになった。『ハーフェズ詩集』はイラン人の家庭には必ず一冊はあるという。上の画像は私の本棚にあるものである。

岩波文庫で発行されているゲーテの『西東詩集』の紹介文には次のように書かれている「幼い頃から東洋にあこがれを抱いていたゲーテは、老年、ペルシアの詩人ハーフィスを知り、深い愛着をもった。さらに、才気溢れるマリアンヌと出会い、作家の感情は詩となって迸しる。彼女との相聞歌を含む「ズライカの巻」は、本詩集中最もよく知られている。ここには、東洋の恋・酒・知恵と、西洋の精神とのうるわしい結合がある。

一方、同じシーラーズで生まれたサアディもまたイランを代表する詩人である。彼の詩には人生のための教訓のようなものが多いため、実践道徳の詩人とも呼ばれている。サアディとハーフェズの二人の国民的詩人を生み出したシーラーズは薔薇の花で有名な美しい町である。アケメネス朝時代の宮殿ペルセポリスを訪れる拠点の町でもあるため、世界中から訪れる観光客が多い所である。人々は二人の詩人の廟を訪れるのも観光の定番である。詩人たちの個々の詩は改めて紹介するので、今回は詩人たちの紹介に留めておく。

私が最も好きなのはニシャプールのオマル・ハイヤームである。彼も非常に人気のある詩人である。とりあえず詩人としておくが、詩人というよりも科学者・天文学者としての方が有名であった。彼が作成した暦はその正確さで高い評価を得ている。彼の死後に彼の4行詩(ルバイヤート)がEdward Fitzgeraldによって英語に翻訳された後に世界中で知られるようになったのであった。ルバイヤートとは4行詩という意味であり、詩の形式を言うものであったが、彼の詩があまりにも有名になったために、ルバイヤートといえばハイヤームのルバイヤートと固有名詞のようになっている。ルバイヤートの詩集は詩と挿絵がペアになっていて見るだけでも楽しい装丁になっている(下図参考)。

それから近年世界中で非常に人気が高まっているのがルーミーである。「愛の詩人」と呼ばれたりしている。スーフィズム(イスラム神秘主義)的な面がある詩人である。ほかにもまだまだあるが、今回はここまでにしておこう。詩の紹介はまた改めて!

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