イスラムを知る:イスラム暦とは?

イスラム暦の各月の名前と日数

1月 ムハッラム 30日
2月 サファル 29日
3月 ラビーウ・アウワル 30日
4月 ラビーウ・サーニー 29日
5月 ジュマーダー・ウーラー 30日
6月 ジュマーダー・アーヒラ 29日
7月 ラジャブ 30日
8月 シャアバーン 29日
9月 ラマダーン 30日
10月 シャウワール 29日
11月 ズー・アル=カアダ 30日
12月 ズー・アル=ヒッジャ 29日

今回のテーマはイスラム暦です。ヘジラ暦、ヒジュラ暦とも呼ばれるものです。要はイスラム世界で用いられている暦のことである。サウジアラビアのメディナで預言者ムハンマドが神の啓示を受けてイスラムが誕生したのであるが、それは西暦でいうと7世紀のことであった。詳しく言うと、ムハンマドがメッカの町を追われて、メディナに移動したのが西暦622年9月24日のことであった。この移動は私たちの時代の世界史の教科書でもヒジュラ(聖遷)という名で取りあげられていた(現在はどうか分からない)。この時を、イスラム暦は紀元としているのである。正確に言うと、当時使われていたアラビアの暦のこの年1月1日、つまり、西暦622年7月16日をイスラム暦元年1月1日としたのである。ヒジュラを紀元としている暦というものの、実際には2か月少々のズレがあるということだ。こんな細かなことはどうでもいいとして、次のことだけを頭に入れておこう!

イスラム暦元年は西暦622年である。

冒頭の表でお分かりのように、1月から12月までには、それぞれに月の名前がついている。日本でも2月如月(きさらぎ)、3月弥生(弥生)などの名前があるのと同様である。そして、それぞれの月の日数が3列目に記されている。30日と29日が交互になっている。イスラム暦は太陰暦なのである。つまり、月の動きに基づいた暦である。ちなみに我々の暦は太陽暦であって、地球が太陽の周りを一周する365.24日に近い365日を一年とする暦である。太陰暦であるイスラム暦は月が地球を一周する29.53日に基づいて作られている。従って、29日と30日の月を交互におくとひと月の平均は29.5日と、ほぼ29.53日に近くなっている。これでも少々の誤差はでてくるが、閏年は置かない。

月の満ち欠けが重要な暦である。月が消えてまた、新月となり三日月が現れだすと、新しい月の始まりである。三日月はイスラムのシンボルでもある。ちょっとややこしいのは、イスラム暦の一日は日没に始まり、次の日の日没にまた、次の日が始まる。だから、例えばイスラム暦の25日というのは24日の日没から始まるのである。我々非イスラムの外国人の場合には西暦で対応してくれるであろうから、問題はないが、実際に戸惑った経験はある。

さて、イスラム暦の毎月の日数を知って、すでにお気づきであろうか。次に重要なことは1年の日数である。

イスラム暦の1年は354日である。

我々の太陽暦とは11日の差がある。1年が11日早く終わってしまう。我々の暦は季節と月が一致しているが、イスラム暦はそうではない、毎年11日づつ先に行ってしまうのである。例えば、仮に今年の1月1日がどちらも同じであったとしてみよう。我々が次の年の元旦を迎えた時に、イスラム暦は11日前に元旦を迎えているということになる。2年で22日、3年で33日となると約1ヵ月先に進んでいるのである。6年経てば2か月、9年経てば3か月以上の差がでてくる。最初元旦が同じだったときにはイスラム暦も冬であったが、9年後のイスラム暦の元旦は我々の9月の末なのである。だから季節と月が合わないというわけである.現実味を帯びるのは断食の時である。断食は9番目の月=ラマダーン月に一カ月の間行われる。断食は太陽がでてから沈むまでの間に行われる。そこでイスラム暦である。ラマダーン月が夏の時がムスリムにとって最も厳しいときとなる。日の長さが長いからである。逆に冬となると日の出も遅く、日の入りも早いから断食する時間は短くてすむ。

イスラム暦は太陰暦なのであるが、イランで使われている暦を紹介しておこう。勿論イランはイスラムの国であるから、他のイスラム諸国と同じようにイスラム暦に従ってイスラムの諸行事を執り行っている。しかしながら、イランではもう一つの暦も使われている。

1月 farvardin 31日
2月 ordibehesht 31日
3月 khordad 31日
4月 tir 31日
5月 mordad 31日
6月 shahrivar 31日
7月 mehr 30日
8月 aban 30日
9月 azar 30日
10月 dei 30日
11月 bahman 30日
12月 esfand 29日(30日)

イラン暦の月の名前と日数は上の通りである。日数を合計すると365日で、閏年には12月が1日増える。つまり、日本で我々が使っている暦と同じ日数、ということは太陽暦である。このイラン暦もイスラム暦と同じように622年を紀元としている太陽暦なのである。そして、もう一つの特徴は元旦(farvardin 1日)が「春分の日」ということである。毎年の春分の日が正月である。これはイスラム誕生以前からペルシャで信仰されていたゾロアスター教の名残であると考えられる。イスラムでは元旦をお祝いする習慣はないが、イラン暦の正月はノウルーズといって、盛大にお祝いをする。ノウルーズの風習はイラン以外の地域でも行われている。ノウルーズの風習も興味深いものがあるので、またの機会に取り上げることにすることにして、今回はここまでにしよう。