「アラブ人とは?」の中で、アラブとユダヤはセム系民族同士であるので言語学的には近いということでした。旧約聖書をみてもアラブとユダヤのルーツであるとされているイシュマエルとイサクは異母兄弟でした。それはそれとして、ユダヤ人とはどういう人たちなのでしょうか。ユダヤ民族とかユダヤ人という人種があるのでしょうか。
佐藤千景著『ユダヤ世界を読む』(創成社新書、2006年)の第一章の冒頭には次のような記載がある。
イスラエル外務省がウェブサイト上で紹介しているユダヤ民族の歴史は、「約4000年前の族長アブラハムとその子イサク、孫のヤコブによってその幕が開かれた」という記述から始まっている。この記述は、旧約聖書の創世記第12章から始まる族長時代に相当する部分であるが、現代においてこうした聖書の物語を、史実としての「歴史」としてとらえる人は少ないであろう。
他方で近年、死海近くにあるクムランの洞窟から発掘された死海文書や、後に述べるマサダの遺跡のように、考古学上の様々な発見によって聖書時代の出来事が徐々に裏付けられつつあることも事実である。とはいえ、過去の旧約聖書に関する多くの研究が示しているように、特に族長時代からダビデ・ソロモン王国成立頃までの記述は、イスラエルの民族に関する政治的、神学的な立場を説明するためにさまざまな部族や集団の民間伝承を紀元前一千年紀頃に再編集したものであるとされている。・・・・中略・・・・
イスラエルの帰還法によれば、ユダヤ人とはユダヤ人の母親から生まれた者、またはユダヤ教に改宗した者と定義されている。この定義に従うならば、ユダヤ人とは先祖の地を受け継いだ者たちだけではなく、特定の宗教信徒を示す名称であるということになる。彼らが別名「啓典の民」または「書の民」と呼ばれているのは、こうした理由による。事実、非ユダヤ人であっても、身体的な特徴を問わず、改宗によってユダヤ民族の一員として認められる場合がある。もちろん、ユダヤ教への改宗は決して簡単なものではない。しかしそれは、来日したスポーツ選手が帰化したにもかかわらず、いわゆる一般的な「日本人」としての集団に加えられることはないという、我が国での民族に対する感覚とは大きく異なるものといえよう。
ここに記載されているように、まずはユダヤ教に改宗した者はユダヤ人なのである。私・日本人がユダヤ教に改宗したとしたらユダヤ人となるということらしい。勿論、ユダヤ教に改宗することは簡単にはできないらしい。それにしても、ユダヤ人というのはユダヤ民族とかユダヤ人種というものではないということは間違いないというわけだ。
もう一つの、ユダヤ人の母親から生まれた者がユダヤ人であるという定義はどうだろう。「あっ、そうか。お母さんがユダヤ人であれば子供はユダヤ人ということだね。」分かりやすいですね。でも実際はそう簡単ではないらしい。ユダヤ人の母とは誰なのか、つまり、母親がユダヤ人であることはどうやってわかるのかという問題が残るというのである。なんかややこしいのであるが、ユダヤ人というのは皆ユダヤ教徒ではあるのでしょうね。
ユダヤ人と言うと外見の特徴がある。ヒゲや帽子などですぐに分かるが、それはそういう格好をすればユダヤ人ということであり、イスラム教徒がベールを着たりするのと同じことで、身体的な特徴ではない。和服の着物をきたのが日本人であるというようなものだろう。
結論としてはユダヤ人という人種や民族はいないということ。ユダヤの民が離散して世界中に散らばって存在しているうちに多様なユダヤ人になっていったというような感じなのでしょうか。