重信房子(日本赤軍元最高幹部)出所

5月8日に重信房子のことを書きました。その彼女が20年の刑期を終えて、28日に出所しました。中日新聞の記事を紹介いたします。

写真に写っている本人の左にいるのが先般紹介した『アラブの春の正体』の著者である娘のメイさんです。私たちの世代は大学時代は紛争に明け暮れた時代でした。3年次以後は休講になることも多く、ある者は学生運動に走り、ある者はノンポリを決め込んで、これ幸いと遊んだものでした。大学を卒業して3年目の1971年にイランに赴任した私にとって、同じ中東のテルアビブで1972年に岡本公三が小銃を乱射して数多くの人を死傷させてたことはショックな事件でした。日本赤軍は上の新聞記事に書かれているように複数の大事件を起こしました。重信房子は日本赤軍の最高幹部だったのです。あれから50余年が経ち、時代は変わりました。重信は逮捕された後に日本赤軍の解散を表明しましたが、赤軍のメンバーだった者達が消滅したわけではありません。今なお、7名が国際手配されています。


次の記事は重信のメディアの質問に対する回答の一部です。読んでみてください。

イスラエルのパレスチナ占領を、ロシアのウクライナ侵攻と重ねて、ダブルスタンダードであると語っています。考えさせられることがないわけでもありません。良くないことではないとはっきりしていることでも、止められない現実がこの世には山ほどあるのです。地球人の劣化が進んでいます。
日本も同様です。特に日本の政治家の劣化、品格の欠如は残念です。政府が胡麻化したり、改竄したり、黒塗りで隠蔽する風潮は、一流企業にも波及しています。有名企業での不正行為が次々と明らかになっても反省の色もない時代に成ってしまいました。重信房子の出所に伴い、色々考える1日でした。

 

エジプトのパン騒動:ロシア・ウクライナ戦争の影響

上の画像は MIDDLE EAST MONITOR の少し前の記事の写真です。記事の内容の一部を要約して抜粋すると以下の通りです。

パンデミックと世界のGDPの3.60%の縮小の影響で国際経済がうめき声を上げている間、エジプトは2020年と2021年の両方で3%を超える世界記録の成長率を祝いました。
コロナウイルスの攻撃に続くウクライナに対するロシアの戦争は、この経済成長を打ち砕くようになりました。それはエジプトの観光業に大きな打撃を与えました。また、小麦と石油の価格の上昇のために耐え難い財政的圧力がかかるようになりました。

エジプトは原油と石油派生物の純輸入国であり、年間1億2000万バレル以上の原油が輸入されています。過去数年間、政府は1バレルあたり約61ドルの石油価格予算を起草しました。世界のバレル価格が120ドルを超え、これが150ドルを超える可能性があると予測されているため、エジプト政府は予算の割り当てを2倍にする必要があります。

もう1つの打撃は、小麦と食料の価格です。エジプトは世界最大の小麦輸入国であり、2021年に1160万トンが国内に持ち込まれました。エジプトの供給大臣、アリ・モセリ氏は、政府は小麦の価格を1トンあたり255ドルと想定しましたが、現在は350ドルを支払っています。残念ながら、エジプトの輸入の86%は、ロシアとウクライナの2つの戦争国からのものであるため、問題はここで止まりません。

政府がすでに継続的な物価上昇、賃金の凍結、補助金の撤回で人々に負担をかけていたときに打撃が来ました。政府は、電気、水、燃料の補助金をほぼ廃止し、食糧補助金の価値と受益者数を削減しました。また、重量を減らした後、補助金付きのふすま(バラディ)パンの価格が上がることになりました。

4月7日のこのブログにウクライナとロシアの戦争が中東の小麦の供給に大きな打撃を与えていることを書きましたが、いまエジプトではその影響がパンの価格に現れてきたわけです。各地でデモが起こり、政府に抗議する運動が広がっているということです。エジプトでは過去何度もパン騒動と呼ばれる動きで政府が揺さぶられた歴史があります。今回のウクライナの戦争の影響が世界各地に影響を及ぼし、それが拡大しつつあることが目に見えるようになってきています。早く、終結してほしいものです。

書籍紹介:「アラブの春」の正体 / 欧米とメディアに踊らされた民主化革命

2010年にチュニジアで起きた民衆の行動が、反政府運動へと拡大し、政権が崩壊したのでした。その余波が中東各国に広がり、エジプトの政権も崩壊したのでしたね。反政府運動の波は長期独裁を続けて来た国々の指導者たちを怯えさせたものでした。その一連の流れをマスコミはすぐに「アラブの春」と名付けたのでした。それは、1968年春にチェコスロバキアで起きた民主化の動きを意味した「プラハの春」という言葉を捩ったものでした。このときにはソ連と東欧軍が介入したのですが、結局は民主化が勝利したのです。

マスコミがジャーナリストが「アラブの春」という言葉を連発する状況をみて私は「春などすぐに来るわけはない!」と思っていたので、この言葉を聞くたびにうんざりしたのでした。結果はその通りでした。一部の国では政権が交代したものの、そこに春が来てはいないのです。いまでは、死語となった「アラブの春」です。

そんな死語となった「アラブの春」を題材とした書物を、今日は紹介いたします。書物の紹介というよりは、書物の存在を紹介したいのです。タイトルは冒頭の通りです。2012年、角川書店発行の新書(角川oneテーマ21)で著者は重信メイです。彼女は「はじめに」の中で次のように語っています。「アラブで生まれ育ち、いまは日本に暮らしている私の目からみたアラブの春について書いています」と。そうです、彼女はアラブで生まれ育ったのです。新書の帯には「大手メディアが伝えない革命の真実」と書いています。アラブの春の運動の経緯や事実関係は知っていたのですが、私は彼女の目からはどう見えていたのだろうかと興味を持ったのでした。著者の名前に魅かれたのです。彼女の母親は「重信房子」です。重信房子とパレスチナ人男性との間に生まれたのが著者「重信メイ」なのです。当時読み終えて特に満足感も違和感もない感想でした。知らないことも沢山あったので、そうなんだと受け入れたものでした。一度読んだだけなので、汚れもなく新品同様を維持しています。ただ一カ所だけ最終章の「おわりに」の中でパレスチナ問題について語った部分に鉛筆で線が引いてあります。次の言葉が印象に残ったのでした。
パレスチナとイスラエルの問題は、宗教的な問題ではないということです。イスラム教とユダヤ教の対立ではありません。
イスラエルは確かにユダヤ教徒がつくった国ですが、彼らに土地を奪われたパレスチナ人はイスラム教徒だけではありません。キリスト教徒も無宗教の人たちもいます。そういう人たちがみんなでかつて自分たちやその親が住んでいた土地を取り戻すために、イスラエルの占領政策に抵抗しています。
弾圧、差別、自由がない・・・だから抵抗しているのです。宗教のためではなく、生活のために戦わざるをえない。そのことをまず知ってほしいと思っています。
私がこのあとがきでパレスチア問題を取り上げたのは、この問題とアラブの春は決して無関係ではないからです。
チュニジアやエジプトで人々が訴えたのは、まさに「人間的な問題」です。・・・・・・」
パレスチナ問題を宗教の問題ではないという辺りは全く同感です。私も以前から同じように考えていました。さらに言うならばイスラム同士での紛争ではすぐにスンナ派とシーア派の対立だと決めつけることが多いのですが、対立の真の原因はそんな単純なものではないと考えています。

さて、この本の紹介を今日行った意味にもう皆さんはお気づきですね。重信房子が近く刑期を終えて出所することになるのです。彼女の今については新聞各紙が書き始めているので、そちらをご覧ください。毎日、短歌を詠んで日々を送っているようです。歌集も出版されるようです。これまでの過去を踏まえた歌のようで、いくつかを読みましたが、興味というか、うーんそうなんだという思いが湧いてきました。テルアビブ、ハーグなどなど、様々な思いが浮かんでくるようです。