昨日のテレビニュースではイスラエルの首相がアブダビを訪問し、UAEの事実上の指導者ムハンマド皇太子と会談したことが伝えられました。両国の国交樹立から1年余が経ち、ベネット首相の訪問が実現したのです。
13日、アブダビで、イスラエルのベネット首相(左)を迎えるアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のムハンマド皇太子(AFP時事)
このニュースをこのブログで取り上げる意味はどこにあるでしょうか。私は、今後の中東情勢が非常に不透明になりつつあると思うのです。単純に言えば、この先の状況が分からないということです。
アラブの国であるUAEとユダヤ国家が友好関係を築き、平和な中東社会が実現するならば歓迎すべきことと言えるでしょう。でも両者の思惑はまた別のものがあるようです。メディアも注目するのはイランとの関係です。両国が協力する分野は多々あるでしょうが、政治的な面では対イラン政策です。イスラエルはUAE以外のアラブ諸国とも関係を改善しつつあります。それらは結局はイラン包囲網を築くということなのです。イランはアラブではありません。イランとアラブ諸国の関係はサウジアラビアのように険悪なところもあれば、オマーンのように関係が良好な国もあります。が、全体としてみれば関係は良くありません。イエメンの内戦ではイランとサウジアラビアの代理戦争の体をなしているわけです。イスラエルのアラブ接近の動きはトランプ大統領時代のアメリカの仲介によるものです。つまり、アメリカの対イラン政策の一環であるわけです。
話を広げましょう。いまサウジアラビアがレバノンからの輸入をストップさせています。レバノンは政治も経済も混乱状態にあります。政治への国民の信頼は崩壊しています。経済はサウジへの輸出が頼みの綱的な面もあったのですが、それがサウジの輸入規制によって、ますます混乱しているのです。レバノン国内の宗教分布は非常に多岐にわたっています。そこで現在の政治の運営はキリスト教徒、イスラムシーア派、イスラムスンニー派と3者から選出された三頭政治になっていたのです。もうおわかりでしょう。シーア派はイランの影響、とくにヒズボラの影響をうけています。スンニー派はサウジアラビアの影響をうけているわけです。そして、レバノンはフランスの植民地でありましたから、宗主国であるフランス(キリスト教)がいまだに影響力を有しています。日産のゴーンさんを思い出しますね。
今回のサウジの輸入禁止の原因はシーア派から出ている政治家の発言に対して、サウジ側が激怒した結果と言われているのです。
イランを巡って、今後さらに中東情勢が複雑化する予感がするのです。イランには中国やロシアが接近します。そしてこれまで通りシリアに影響力を及ぼします。逆にアメリカとイスラエルはアラブを仲間に入れようとしているわけです。そこにインドも加えようとの動きもあるようで、日本・アメリカ・オーストラリア・インドのクアッドに習い、これを中東のクアッドと呼ぼうとしているようです。ますます目が離せなくなる今後の中東情勢です。