今回のテーマは石油である。20世紀は「石油の世紀」とも言われた。石油が燃料としてだけではなく、加工されてありとあらゆるものに製品化されたのである。我々の日常生活にも石油は大きく貢献してきた。温暖化や環境破壊などが問題視されだしたことから、21世紀は「脱石油の時代」になるはずであったが、福島の原発事故などもあり、脱石油へのシナリオは容易ではない。「脱石炭」さへ日本では難しいのが現状である。そんな現状であるが、石油資源について考察してみることにしよう。
(1) 原油確認埋蔵量
石油いうものの大元は原油である。地下から汲み上げる。それが海底の地下深いところから汲み上げることもある。その原油を製油所で精製してガソリン、灯油などが作られる。一方でナフサが作られて、それより数多くの種類の石油化学製品が作られる。その大元である原油の埋蔵量から見ることにしよう。以下の表は2018年末時点の「原油確認埋蔵量」を地域別に示したものである。
10億バレル | % | 可採年数 | |
USA | 50.0 | 2.9% | 10.5 |
Total North America | 226.1 | 13.3% | 30.8 |
Venezuela | 303.2 | 17.9% | 393.6 |
Total S. & Cent. America | 330.1 | 19.5% | 125.9 |
Norway | 7.9 | 0.5% | 11.0 |
United Kingdom | 2.3 | 0.1% | 6.3 |
Total Europe | 13.4 | 0.8% | 10.4 |
Azerbaijan | 7.0 | 0.4% | 24.1 |
Kazakhstan | 30.0 | 1.8% | 44.8 |
Russian Federation | 106.2 | 6.3% | 25.8 |
Total CIS | 144.9 | 8.5% | 27.8 |
Iran | 157.2 | 9.3% | 86.5 |
Iraq | 148.8 | 8.8% | 90.2 |
Kuwait | 101.5 | 6.0% | 91.9 |
Qatar | 25.2 | 1.5% | 36.1 |
Saudi Arabia | 266.2 | 15.7% | 61.0 |
United Arab Emirates | 97.8 | 5.8% | 68.1 |
Total Middle East | 807.7 | 47.6% | 70.0 |
Algeria | 12.2 | 0.7% | 21.7 |
Angola | 9.5 | 0.6% | 15.6 |
Libya | 48.4 | 2.9% | 153.3 |
Nigeria | 37.5 | 2.2% | 51.6 |
Total Africa | 126.5 | 7.5% | 42.9 |
China | 25.7 | 1.5% | 18.3 |
Indonesia | 3.2 | 0.2% | 9.2 |
Total Asia Pacific | 48.0 | 2.8% | 16.7 |
世界全体 | 1696.6 | 100% | 50.2 |
出所は石油メジャーのBPの「Statistical review 」である。時には、確認可採埋蔵量ということもある。現時点で地下に埋蔵されていると推定できる量のうち、現時点での採掘技術で採掘可能な埋蔵量である。現代の科学では地球内部に存在する原油量は物理学的に推定できるようである。そして、現在の科学技術で採掘できる量を示しているそうである。数十年前には深海に油断があることが分かっていても採掘する技術がなかったが、今はそれが可能である。その時点で埋蔵量は増えるのである。上表の埋蔵量の単位は「十億バレル」である。バレルとは英語で樽という意味である。1バレルは159リットルである。昔、アメリカのペンシルベニア州で石油が発見されたときに、ウィスキーの樽を利用して輸送したことから、バレルが原油量の単位になったのである。埋蔵量の後ろの列の%は全体に占める比率である。中東地域の比率は 47.6 %となっている。つまり世界全体の埋蔵量の約半分が中東地域に偏在しているということ。そして、最後の列の可採年数は、その埋蔵量を現在の年間生産量で割り算したものである。簡単に言うと、埋蔵量が100億バレルで、年間生産量が10億バレルなら10年で底をついてしまうという単純な目安である。アメリカは約10年となっている。もうずっと10年以上まえから10年程度となっている。新規に油田が発見されることもあるが、それは先に述べたように深海油田などの存在が分かっていても可採でなかった油田が可採になったりするためである。アメリカのシェール石油なども近年に埋蔵量が増えた一因でもある。埋蔵量が多く、可採年数も長いのがやはり中東地域であることも良く分かる表である。 (続く)