イスラムを知る:4つの法源

イスラム社会はイスラム法によって統治されている。今回はイスラム社会の法の体系について簡単に記してみよう。

イスラム世界で最も重要なのは啓典、つまりコーランであることは誰でも知っているだろう。コーランはイスラム法の体系の中で最も重要な第一の法源である。コーランは神の啓示を集大成したものである。神がムハンマドに与えた啓示が示されている。イスラム社会での決め事は全てコーランに則ればいいわけであるが、必ずしもコーランで全てが解決するわけではない。そこで次に拠り所となるのがスンナである。

スンナとは範例、慣習の意味である。ムハンマドの言葉と行為によって示されたものである。具体的にはそれらを集大成した伝承(ハディース)によって保存されているのである。ムハンマドが生前に示した種々の問題に対する解釈であったり、彼が処理した前例などである。ムハンマドの言行録であるといってもいい。ハディースは日本語にも訳されているので私も読んでみたが、分厚い文庫本6冊にぎっしりと書かれているものである。極端にいうと「ムハンマドが・・・・について尋ねられたときに、ムハンマドはこのように答えたと、誰誰が言った、ということを誰誰の友人の誰誰が誰かに伝えて、それを聞いた誰誰が誰誰に文にして記録していた」とかのようなものもあり、スパッと問題を解決するようなものではない部分が印象的であった。が、様々な面での疑問に対して答えらしきものが示されているのである。これが二つ目の法源である。

3つ目の法源はイジュマーである。これはムハンマドの死後、権威ある法学者による総合意見、個々の学者の研究結果がイスラム社会の中で受け入れられた「神の真意」と見なされて法源となったものである。権威ある法学者による法学的な見解とでもいうべきものだろう。

最後の4つ目の法源はキャースである。「類推」「理性による類推」などと訳されることが多い。コーランとスンナから三段論法的に規定を導きだした結果によるものである。

我々に異教徒にはよくわからない部分が多いが、当事者達にとってはコーランをどう解釈するかは大きな問題である。人の運命をも左右してしまう法の解釈だからである。近代的な現代になっても、イスラム法を維持し続けることは難しいことであると思う。例えばイスラム銀行が利子を取ってはいけないというイスラム法に逆らわずに銀行業務を続けるためには、イスラム法に抵触しない法解釈が通用するような論理が必要である。また時間があれば、イスラム金融などの法解釈にも触れることにしよう。

 

 

 

 

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