東京五輪閉幕:中東諸国のメダル数

2021年8月8日、TOKYO2020・東京五輪が閉幕しました。コロナ禍の下で開催賛否両論の中での開催でした。野球では台湾が参加を見合わせました。個人ではコロナ陽性のために出場できなかったアスリートもいれば、自ら参加を辞退したアスリートもいました。開催の裏には様々な背景があるわけですが、ともかく終了しました。そこで、このサイトでは中東諸国のメダル数をチェックしました。今朝のメディアから作成してみました。金メダルの数を優先して順位づけしています。まずは1位から10位までをあげて、その下に中東諸国を並べています。結局、メダルを大量に獲得しているのは先進国です。ここに挙げた中東諸国9か国のメダル数は38個です。アメリカは1国で中東全体の3倍ほどの獲得です。1位から6位、それに10位のイタリアが中東全体より多く獲得しており、7から9位のオランダ、フランス、ドイツは中東合計数とほぼ同じ数でした。

順位
1位 米国 39 41 33 113
2位 中国 38 32 18 88
3位 日本 27 14 17 58
4位 英国 22 21 22 65
5位 ROC 20 28 23 71
6位 豪州 17 7 22 46
7位 オランダ 10 12 14 36
8位 フランス 10 12 11 33
9位 ドイツ 10 11 16 37
10位 イタリア 10 10 20 40
27位 イラン 3 2 2 7
35位 トルコ 2 2 9 13
39位 イスラエル 2 0 2 4
41位 カタール 2 0 1 3
54位 エジプト 1 1 4 6
74位 ヨルダン 0 1 1 2
77位 バーレーン 0 1 0 1
77位 サウジアラビア 0 1 0 1
86位 シリア 0 0 1 1

長年の努力が実を結び、快挙を成し遂げたアスリートもいれば、そうでなかった者もいます。色々なドラマがありました。今回は10代の若い人たちが大活躍でした。本来のオリンピック精神からかけ離れてしまった今のオリンピックを私は否定的に見ていますが、そこに参加するアスリートたちの活躍には応援をし、感動もしました。でも、最終的にオリンピックから見えてきたことの一つは国別メダル数の偏りです。それは世界の格差でしかありません。

コーランについて(8):第5章・・・食卓③

Pixabayからの画像

7月も月末になり猛暑が続いています。オリンピックが始まって連日日本のメダルが増えているのは明るいニュースです。この明るいニュースがコロナを吹っ飛ばしてくれることを期待したのですが、そうはいかないようですね。昨日27日の感染者が急増しました。東京は2800人ほど、そのほか埼玉や大阪も増えました。一昨日は青森で震度4,今朝は東北地方に台風8号が上陸と色々なことが起きている日本列島です。

こんな時には神に祈り、救いを求めたい気がしないわけではありません。それはそれとして、私は静かに過ごすことにしています。さて、前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。前回、前々回は「第5章食卓」でした。この2回で終わりにしようと思ったのですが、この章には食べ物以外のことも沢山述べられていましたね。でも、タイトルが食卓となっている理由を最後に紹介しておきたいと思います。

112節:さて、その弟子たちが言うことには、「マルヤムの子イーサー様、貴方の主は私たちに天から食卓を下すことがおできになるでしょうか」と。彼は「アッラーを懼れまつれ、もし、お前たち本当の信者であるならば」と答える。
113節:彼らが言うに、「私たち実際に(そういう有難い食卓から)食べて見たら、気持ちもすっかり落ちついて、貴方の仰しゃったことが本当だったということもわかって、立派な証人になることができようと思いまして」と。

人々の「神は我らに食を恵み与えてくれるのでしょうか」という問いに、イーサーは「お前たちが本当の信者なら、神は与えてくれよう」と答えたわけですね。それに対して人々は「実際に与えて見てくれたら、それが本当だという証人になりまっせ!」というやり取りの部分があるわけです。この部分から「食卓」という章の名前になったということです。イーサーとはイエスキリストのこと、マリヤムは聖母マリアであることはお分かりですね。イエスもイスラムでは預言者の一人なのです。

ダマバンド山 5,671m

今回も山の紹介である。ダマバンド山 5,671m である。


イラン北部、首都テヘランの北東方70キロメートルにあり、アルボルズ山脈中にそびえる。同国の最高峰で標高5671メートル。アルカリ岩系の粗面岩、粗面安山岩からなる成層火山で、噴火記録はないが、山頂火口付近には噴気孔が多く、東~南側山麓(さんろく)には温泉がある。頂部は万年雪を頂く。1836年イギリス人W・トムソンが初登頂した。ゾロアスター教の霊地として知られ、南麓にある同名の集落(人口約5000)は著名な避暑地、行楽地である。(日本大百科全書より引用)

イランの首都テヘランは標高 1200m ほどに位置している。そして、町から北の方角には高い山が連なっている。冬は真っ白な雪に覆われていて、夏には溶ける。それが、大都市テヘランへの供給水となる。その連山がアルボルズ山脈の一部なのだ。テヘランから 66km 離れた北東方向にあるのが、ダマバンド山である。直接テヘランからは見えないが、テヘランからカスピ海方面へ抜けるいくつかのルートのうち、東ルートつまりチャールース方面へ抜けるルートを取るとダマバンド山の姿を見ることができる。飛行機を利用する場合は勿論見ることができる。標高であるが5,671m と記されているが、5611m や5610mというのもあるから、どれが正確化は分からないが、5600mほどの高さであることは間違いない。

イランに在住する日本人の間では、イラン富士と呼ばれている。冒頭の画像が示す通り、富士山のように形の美しい神々しい山である。
日本の旅行会社「西遊旅行」のウェブをみると、ダマバンド山へのツアーの企画も掲載されている。勿論、高山病対策などを要する山なので簡単なものではないだろうが、興味ある人はこのサイトを覗いて見るといいだろう。

 

シナイ山

前回がアララト山だったので、今回も山にしようと思った。そこで選んだのがシナイ山だ。
場所は言うまでもなくシナイ半島であるから、エジプトに位置しているわけである。シナイ半島の南部にあって、標高は2,285m 。上の画像は朝日新聞社発行の地図からの引用であるが、山の名前はムーサー山(シナイ山)と書かれている。ムーサーとは旧約聖書に登場するモーセのことである。モーセがユダヤ人を率いた出エジプトの物語の舞台である。つまりモーセが十戒を授けられたことで有名なあのシナイ山である。次の画像は前回同様に Pixabay のフリー画像のシナイ山である。
次の画像はまた別のサイトのフリー画像であるが、これは山の上からの景色である。
そして次のフリー画像は山頂からみた日の出の景色である。
神が授けた十戒とは:
主が唯一の神であること
偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
神の名をみだりに唱えてはならないこと
安息日を守ること
父母を敬うこと
殺人をしてはいけないこと(汝、殺す勿れ)
姦淫をしてはいけないこと
盗んではいけないこと(汝、盗む勿れ)
隣人について偽証してはいけないこと
隣人の財産をむさぼってはいけないこと
であるが、ここではそれだけにとどめておこう。

つまり、シナイ山は聖地である。従って世界中から多くの人々がシナイ山を訪れているそうだ。その人たちを受け入れる体制も整っており、体力に自信がなければラクダの背に乗って頂上近くまで行くことができる。夜中に登山して頂上で日の出を迎えるというのが定番である。日本からも旅行会社のツアーが販売されていることがネットで見つけることができた。

確信があるわけではないが、十戒を授かったという山は実はこのシナイ山ではなく、アラビア半島の違う場所なのだという説もあると聞いたことがある。もともと、この物語が神話のようなフィクションであれば、そんな山は存在しないのであろうし、事実であるならその所在地の真偽にも興味関心が湧くのである。私の場合は後者なのであるが。

オリンピックが近づきましたね。

コロナ禍の中でオリンピック、パラリンピックの開催が近づいてきました。開催の賛否両論、観客をどうするかの意見も多岐に分かれている中での開催になりますね。そこで、前回のリオデジャネイロでの開催時の中東諸国のメダル獲得数を調べてみました。出所は朝日新聞のネット記事から拝借しました。

順位
6 日本 12 8 21 41
25 イラン 3 1 4 8
41 トルコ 1 3 4 8
48 バーレーン 1 1 0 2
54 ヨルダン 1 0 0 1
69 カタール 0 1 0 1
75 エジプト 0 0 3 3
77 イスラエル 0 0 2 2
78 UAE 0 0 1 1

メダル数は日本が41個で第6位だそうです。中東ではイランとトルコが8個ですが、金メダルを3個取っているイランが25位、トルコが41位となるようです。メダルの数や順位などどうでもいいことですが多くの国はそんなにメダルを取ることができないわけです。先進国有利な競技大会です。

私はもう何年も前からオリンピックは不要と考えています。始まった当時のアマチュア精神が無くなった以上、存在価値はないと思っています。勝つことよりも参加することに意義があり、勝ち負けではなく世界の平和、友好のシンボル的な競技会であったのです。そのころはプロのアスリートは参加できませんでした。参加標準タイムなどもないので、閉会式が終わるころになって帰ってきたマラソンの選手などもいました。水泳でも一人ダントツに遅いスイマーもいてみんなで応援したものでした。

プロ選手も出場できるようになった今のオリンピックに魅力はありません。それぞれのスポーツにはワールドカップがあって世界一を競う大会があります。なのに、オリンピックを開催する意味はどこにあるのでしょうか。IOCの姿勢もいけません。商業主義になり下がりました。面白くするために、協議のルールにまで口出しするようになりました。レスリングもそのとばっちりを受けてオリンピック種目から外されかけたこともありました。IOCを接待しなければならなくなります。IOCの意向に沿うために競技種目まで歪められてしまいます。

開催地の選考もIOCの独壇場です。IOC役員は開催希望国を豪遊してまわり、接待を受けて、あれこれ注文をだして決定しているわけです。金のかからない五輪には、なりようがありません。

サッカーの世界一はワールドカップでいい。テニスの世界一はウィンブルドンなど4つのグランドスラムがあればいい。野球など世界でマイナーなスポーツは五輪には要らない。プロとして稼ぐことの難しいような競技種目、例えば陸上だとか、フェンシング、体操などは五輪にふさわしいのではないだろうか。

中途諸国のメダル数から横道に逸れてしまったようだけど、コロナ禍の今、開催地以外で真剣に開催を望む国、国民はいったいどれくらいいるのでしょうか?

というものの、出場のために一生懸命頑張っているアスリートは応援していますよ、勿論。特に水泳の池江さんなどはそうですね。
冒頭の画像は昨日のイラン・デイリー紙の記事です。バドミントンの出場権を勝ちとったイランの女子選手の紹介です。感染対策を十分にして来日してほしいものです。

 

 

イスラエルの新政権発足!

前々回の続きになります。
イスラエル国会は13日、右派政党「ヤミナ」のベネット党首が率いる連立政権を承認し、歴代最長の12年続いたネタニヤフ政権に終止符が打たれた。連立を切り崩そうとしていたネタニエフの抵抗もむなしく、イスラエル国会は連立政権を承認した。投票結果は60対59であるからギリギリの得票であった。連立を率いるベネットのヤミナ党は右派強硬派であるから、これまでのネタニエフと同じ傾向の思想であるが、連立構成は前々回に述べたように8党の構成であるから、右派強硬派ばかりではない。ベネット自身がこれまでに比べて、穏健な面を出さざるを得ないというような発言をしている。様々な思想をもった党の連立であるから、いつ破綻するかもわからない。
ネタニエフの汚職に関する裁判も進むことであろうし、今後のイスラエルを注視することが必要だ。

イスラエル:ネタニエフ政権の終焉か!

これまで何度か総選挙をやっても連立協議がまとまらずに選挙を繰り返したイスラエルであるが、この度、タイムリミット30分前にようやく八つの野党が連立を組むことに合意した。というものの最後までどうなるかはわからない。
出所:中日新聞

上の図でお分かりのように、今予想されている連立野党の議席は62と、過半数の61に対して一人多いだけなのである。造反者が一人でも出れば過半数には達しない。何よりも危惧されているのは、8党の政治思想がバラバラであるということ。これで連立を組んで事がスムーズに進んでいくのかということである。主義主張が異なる者同士の連立であって、唯一一致しているのは反ネタニエフということだ。第二党党首のラピド氏が組閣作業を開始したわけであるが、今後の動向は注目しなければならないだろう。

私個人としては、ネタニエフ政権のパレスチナに対する強硬な姿勢には辟易している。この二年間に4回の総選挙をしても政権を樹立できなかったということは、彼の求心力は既に衰えているということだ。汚職問題も発覚して、彼の立場は弱まっている。その彼が、自分の足元を固めようとするために手っ取り早い手法は、国外の敵(ここでは当然パレスチナ)との抗争を拡大することである。パレスチナに平穏をもたらすのはもだ遠い先のことであろうが、ネタニエフは退場してもらったほうがいい。

 

在イスラエルの米大使館

 

日本時間の21日午前にハマスとイスラエルの間で停戦合意に至った。この間にパレスチナ側では多くの子供たちも犠牲になっている。国連安保理事国の足並みが乱れて、停戦への道筋がつけられなかったが、エジプトの仲介ということで停戦に至った。
衝突の発端は例のごとくエルサレムでの両者の扱いによるものであるが、今回、このように一気に激しい戦闘になったことは、双方のリーダーの自己本位的な思惑によるところが大きい。特にイスラエルではネタにエフが求心力を失っており、それを挽回する意味でも非常に強硬な手段に出たのである。

両者の衝突のことはさておいて、停戦協定のあと、米国務長官であるブリンケンが25日にイスラエルを初訪問した。彼がネタニエフと会談したあと、パレスチナ自治区でアッバス議長とも会談し、その後、エジプト、ヨルダンを訪問したはずである。

トランプ前大統領がイスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移転させたことは2018年のことであった。実は米合衆国議会では1999年5月31日までにエルサレムへ移転するように1995年10月23日にエルサレム大使館法(Jerusalem Embassy Act)が成立していたのであった。しかしながら、クリントン、ブッシュ、オバマ大統領はそれを執行しなかったという経緯がある。それは1967年の第三次中東戦争でイスラエルが獲得した土地を、アメリカが公認することになるとの恐れであった。それをトランプが執行したのであった。当時、アラブ諸国は勿論、世界各国が非難したものであったが、移転は実行された。

トランプからバイデン大統領に代わっても、米国大使館の位置は元には戻らない。議会で決めたことをトランプは執行しただけであるから、戻しようがない。戻すなら再び議会での議決が必要となるのだろうが、現在の米の政治家がそんなことをするわけがない。トランプが脱退を指示したパリ協定や、そのほかの国際協定への復帰はあっても、エルサレムの米大使館の位置はもう戻らないのである。冒頭の図は旧市街と米大使館の位置を示す地図である。ウィキペディアには次のように書かれている。「この場所はエルサレム旧市街のダマスカス門(Damascus Gate)から公道60号線で約5km南へ行った所のそばで、一部は1946~67年停戦ライン(1946-67 Armistice line)に跨っていて、一部は西岸地区に、一部は無人地帯にある。国連の人は、国際法上は占領地区にあるのでどちら側もそこを使うことはできない、ともいっている。」

 

中東のコロナ感染状況2

昨年の今日、5月19日付の米国ジョンズ・ポプキンス大学のコロナによる世界のコロナ感染の集計から中東諸国と日本を編集して以下のようにアップしました。1年後の今はどうなっているのでしょうか。

2020/5/19
Country Infected Death Country Infected Death
Turkey 150,593 4,171 Bahrain 7,184 12
Iran 122,492 7,057 Oman 5,379 25
S.Arabia 57,354 320 Iraq 3,554 127
Qatar 33,969 15 Lebanon 931 26
UAE 24,190 224 Jordan 629 9
Kuwait 15,691 118 Yemen 130 20
Egypt 12,764 645 Japan 16,305 749

上の数字を見ると、あの頃に大騒動していたのが噓のようです。日本が1万6千人だったのです。今なら3日でこの数値に達しています。それはさておいて、今日現在の数値が次の表になります。

2021/5/19
Country Infected Death Country Infected Death
Turkey 5,139,485 45,186 Bahrain 202,556 752
Iran 2,779,415 77,532 Oman 207,109 2,219
S.Arabia 435,027 7,188 Iraq 1,146,948 16,029
Qatar 213,855 536 Lebanon 536,554 7,641
UAE 548,681 1,637 Jordan 726,432 9,295
Kuwait 292,490 1,696 Yemen 6,586 1,297
Egypt 246,909 14,388 Japan 694,041 11,674

いずこも増えています。この数値がどこまで正確かは疑問もあります。が、日本の死者数はサウジ、UAE、レバノン、ヨルダンなどの感染者40~70万人という国と比較しても多いように感じます。医療が進んでいると思っていた日本ですが、ヨルダンは感染者が日本より多いけど、死者数は少ないということが分かります。
ここには掲載しませんが、トルコのワクチン接種は2600万人程になっています。総人口の30%位になります。それに比して日本は対象者の数パーセントというのはいかにもお粗末ではないでしょうか。接種予約段階でトラブル続きの日本は先進国とは言えません。中東地域のコロナの状況をお伝えするつもりでしたが、日本の実体の愚痴になってしまいました。

クルド人について

2020年2月に「クルド人の国家ができようとしていた(イラクの歴史3)」というい記事を書きました。タイトル通りの内容で、それはそれでいいのですが、先日来メソポタミアの民族などを書いてきましたのでクルド人という民族そのものについてちょっと書いてみようと思いました。

先ずは、クルド人の話す言葉はクルド語です。クルド語は言語学的にはインド・ヨーロッパ語族、イラン語派西イラン語群に属する言語のひとつである。つまり、イランで話されているペルシャ語に近い言語である。クルド語をクルド語で書くと كوردی である。ペルシャ語と同じくアラビア文字を使用している。インド・ヨーロッパ語族に属していることからわかるように、イラン人と同じアーリア系の民族である。19世紀のフランスの考古学者は身体的特徴として「肩幅が広く、胸板の厚い、中肉中背の美しい人々である。体のバランスがとれていて、頭は小さく、髪は黒く巻き毛である。額は広く、鷲鼻で、目は大きく瞳は黒い。眉は濃く、頬は出ていてばら色である。これらの人々はたいてい小麦色の肌で、黒くて薄い髭を有している(Pars Today のウェブサイトより引用)」と述べているそうである。

Pars Today はさらにクルド人の衣服についても次のように記している。

クルド人は、イランの他の民族と同じように独自の美しい民族衣装を有しており、クルド人はそれぞれ、昔からの文化の象徴としてそれを保持することを義務付けられています。各民族、各国民の文化や慣習において、衣装はその歴史や社会、価値観を示す象徴的なもののひとつです。
クルド人の民族衣装は、地域や社会階層により、それぞれ異なっています。クルド人の地域には、西アーザルバイジャーン、コルデスターン、ケルマーンシャー、北ホラーサーン州が含まれます。イラン、イラク、トルコ、シリアに暮らすクルド人の衣装は、各地の気候条件に応じた美しい装いとなっています。クルドの民族衣装を研究しているナーザニーン・エスファンディヤーリーさんは、このように述べています。
「地元の男性の衣装には、体、頭、足を覆うものがあります。これらはそれぞれ、季節、仕事、生計、儀式、祝祭の種類によって異なっています。クルドの各居住区によって衣装は異なっていますが、体を完全に覆うという点ではすべて共通しています。クルド人男性の衣装は、次のようなもので構成されています」。

チューヘ:コットンあるいはウール、ヤギの毛でできた前開きの丈の短い上着。クルドの伝統的衣装のひとつ。
ファランジー、ファラフジー:フェルトの長袖衣装
パントール:足首がすぼまったゆったりしたズボン。ランクとも呼ばれる。
マレキー:襟のないシャツ。ボタンで留める。
スーラーニー:ゆったりした長袖のシャツ。シャツの袖には三角形の布がついており、通常手首や腕に巻きつけている。
シャール:およそ3メートルから10メートルの布で、腰付近に巻く。また男性が帽子の代わりに頭に巻く布もある。
ピーチ・オ・キャルーラウ:クルドの帽子は、通常女性たちがクルド独自の文化に残されている模様を使って、特別な技量を用いて編んだもので、黒と白が用いられている。先人たちの教えによれば、男性は頭をむき出しにすべきではないとされている。
プーチ:白と黒のハンカチのような布で、帽子の周りに巻きつける。
キャラーラシュ:足を覆うもの。白色で非常に美しく織られており、絨毯の糸と絹糸、革でできている。使用されている素材から、匂いを防ぎ、涼しさを維持できる。その特性上、冬や雨の季節には使えない。

上の写真からもわかるように日本のモンペのようなズボンが特徴的である。ここで述べられているクルド人の特長は Pars Today から引用したものであるから、イランのクルド人についての記述である。クルド人はご承知のようにイラク、トルコ、そしてシリアに居住しているわけであるから、必ずしもここで記述されたものが全てではないであろうということを追記しておこう。

私自身は昔テヘランに居た時にクルド人と出会ったことはある。でも、それは僅かな人数でしかなかったし、テヘランにはアフガン、トルクマンほか数多くの民族がいたので、特に気にすることもなかったのである。その後、2011年にケルマンシャーを訪れたことがある。ケルマンシャーはクルド人が大勢居住している都市なので、そこでは多くのクルド人と出会いました。どこでもペルシャ語が通じたので、特に違和感を覚えることはなかった。この時の旅は3人だったのだが、エコノミークラスの宿をとった。フラット貸しの宿で寝室二つにベッドが3つづつ置かれていた。一番目を引いたのは受付のカウンター周りにはキリストの宗教画が飾ってあったことだった。オーナーはムスリムではなかったのだ。町で声をかけてきた人がいて、翌日に彼の家に招待されたのもケルマンシャーの想い出である。

最後にクルドに関してし日本で出版されている本を一冊紹介しておこう。新評論発行・勝又郁子著『クルド・国なき民族のいま』は2001年発行のものであるが、クルド問題について詳しく知ることができる。