皆さんはハディースを知っていますか。上の画像は中央公論社発行、中公文庫の表紙です。第1巻から6巻まで6冊に上る大著です。今は絶版になっていて、古書で一冊5千円位しています。私は昔、定価で買うことができました。イスラムに馴染みのない人にはあまり縁のない物かもしれませんが、イスラム教徒にとっては聖典コーランに次ぐ非常に重要な文書なのです。インターネットでハディースを説明しているものの中から、手短に分かりやすいのをここに紹介しましょう。
世界大百科事典 第2版の解説
ハディース【ḥadīth】
広くは伝承一般,狭くは預言者ムハンマドの言行に関する伝承を意味するアラビア語。狭義のハディースは,預言者の教えを守り,その人間像を後世に伝えようとするサハーバ(教友)の自然の情に発し,彼の死の直後から数多く語り継がれ,8世紀にズフリーによって最初に収集・記録された。それは一方で,ムハンマド伝に始まるイスラムの歴史叙述の発達を促したが,他方,預言者によって確立された宗教的・倫理的・法的慣行=スンナをハディース研究によって知ろうとした学者たち,ハディースの徒を誕生させた。
わかりやすいと言いましたが、決してそうではないですね。要はムハンマドが生存中に言った事や彼がとった行動をまとめたものです。例えば、「Aという人がムハンマドに~~について尋ねたら、ムハンマドはこのように答えた」のようなものです。実際に読んでみると、大変疲れるものでした。
Aさんがムハンマドに~~について尋ねるとムハンマドはこう答えた、とBさんが言ったということを、Cさんが、Dさんより聞きつけた。などと回りくどい部分がいっぱいあって6冊全部を読むには相当の覚悟が必要です。正直なところ私は全部を読んでいません。でも、結婚式での酒についての記述などは興味深い物でした。初期のイスラムでは酒は全面的に禁止されていたわけではなかったことが分かりました。
イスラム社会はコーランの記述が全てです。でも、コーランの記述をどのように解釈すればいいか難しい場合があります。そのようなときの対処方法がいくつかあるわけですが、その一つとしてハディースに示されているムハンマドの言行録が役に立つわけです。
でもムスリムの人々の中に生きているハディースは、ハディースの中に示されている言葉です。いま私の手元にあるのは「40のハディース」というものです(次の写真)。これは私が東京にあるモスク、東京ジャーミーで頂いたものです。
この中に書かれている事柄をムスリムは日常生活の糧としているわけです。すべてをお示しはできませんが、いくつかを画像で以下にアップしておきます。良いことが書かれていると思います。
イスラムとは徳の教えである。
豊かさとは富の多さではない。豊かさとは心の満足(知足)によるものである。
もっとも善き人とは、妻を大切にする人である。
イスラムの教えはこのようなものなのです。このような教えに逆らっている人は、イスラム社会に居てもムスリムではないのです。一部の過激なテロを引き起こすような人々はムスリムではないのです。ムスリムも我々と同じ人間なのです。