サッカーワールドカップの開催地・カタールのこと


サッカーのワールドカップが始まりましたね。私はサッカーにはあまり関心がないのですが、優秀な選手たちが選ばれて日本代表チームとして参戦するのですから、応援はします。昨日はサウジアラビアが優勝候補のアルゼンチンに勝つという番狂わせがあったようです。中東・イスラム世界を扱うこのブログの主としては拍手です。今日は少しだけ開催地のカタールについて書いて見ましょう。

ペルシア湾にニョキっと突き出た半島のような島のような形がカタールです。1800 年代半ばからアル サーニ家によって統治されていたカタールは、主に真珠採掘で知られる貧しい英国の保護領でした。この真珠産業も日本の御木本が開発した養殖真珠によって衰退したのでした。でも、現在は石油と天然ガスによる多大な収入をもたらす独立国家へと変貌を遂げています。身近な国ではないように見えるが、実際にはそうではありません。カタールの化石燃料は石油よりもむしろ天然ガスの開発が先んじており、日本は大量の天然ガスを輸入してきたのです。天然ガスは気体であるので、それを液化したガス、つまりLNG=液化天然ガスを専用のタンカーで運んできたのです。液化施設を造るには莫大な費用が掛かるために、日本も出資したプロジェクトで開発を進めました。実用化後はカタールにとっても永続的に利益がもたらすように「take or pay」「テイク オア ペイ」という契約方式をとっていました。つまり日本側での需要が例え減った場合のリスクをなくする方法です。LNGを受け取ることが義務付けされ、受け取らない場合でも支払いはするという契約だったのです。それだけ日本にとってはエネルギー源として必要だったのでした。現在は、輸入元も増えているし、そのような契約は過去のことでしょう。

国際的なニュースをテレビで見ていると「アルジャジーラ」というカタールのメディアからの放送をみることがあるでしょう。中東のCNNと呼ばれることもあるようですが、中東地域のニュースはアルジャジーラが詳しく報道してくれるので助かります。アルジャジーラという意味はアルが定冠詞、ジャジーラが島あるいは半島を意味します。アラビア半島でアルジャジーラというとアラビア半島でしょうが、カタールでアルジャジーラというとカタール半島を意味するのでしょう。ちなみに私の名前は「島」ですからジャジーラです。ペルシア語ではジャジーレです。カタールのことを詳細に述べてもあまり関心はないと思いますので、今日はこの辺で終わりましょう。今夜の日本対ドイツのサッカーを楽しんで応援しましょう。

ロシアのガスをトルコ経由で輸送する話

昨日のイスラエルとレバノンのガス油田のことに関して、もう少し話を続けましょう。1週間ほど前にトルコのエルドアン大統領がカザフスタンの首都アスタナでプーチン大統領に会っています。そこで、ロシアからバルト海経由で欧州にガスを輸送するパイプライン(ノルドストリーム)の代わりにトルコ経由の輸送(トルコストリーム)の考え方を話し合ったそうである。欧州はロシアに対して制裁をしている一方で、ロシアからのエネルギー供給がストップされることは大きな打撃である。従って、ロシアは欧州へのエネルギー供給制限をするが、それはエネルギー収入の減少になるから痛し痒しでもある。両大統領の会談での話題は、ノルドストリームが現在損傷により機能不全であることがロシアにとって痛手であることを物語っている。

レバノンとイスラエル海上境界画定で合意

14日の中日新聞の記事を上にアップしました。図で見るように両国の沖にはガス田が存在するのであるが、その領有を巡り争っていたが、この度、海上の境界を定めることに合意が形成されたということだ。しかしながら、境界線は図のようにカナ・ガス田を横切るような形で引かれた。イスラエルはカナの権益をレバノンに認める代わりに金銭で補償を受けるということである。カリシュ・ガス田はイスラエルが獲得することになった。国交のない両国が合意に達したことは画期的なことであると評価は高い。

この合意が結ばれた裏には米国の仲介が大きかったようである。そしてロシアのウクライナ侵攻により、ロシアから欧州へのガス供給が不安定なことが背景にある。つまり両国はガス開発を進め、そのガスを欧州に供給するという狙いもある。また欧州側もロシア産以外のガスには魅力を感じるであろう。二つのガス田は両国で分け合ったという形であるが、図を見ると両者の間の距離は非常に近い。海底深くでは繋がっている可能性も無きにしも非ずだ。一つのコップの美味しいドリンクを二人がストローで吸い合っている風景が思い浮かぶ。愛し合っているカップルならば微笑ましい。しかし、状況が変われば、お前の方が飲みすぎだと気まずくなる。そんなことのないように、これをきっかけにして両国が友好的に転じることを期待しよう。

イスラエル軍、ガザ空爆:前回の追記

前回、日本のメディアは報道しないと書いたが、7日の中日新聞朝刊には次の記事がでていたので、紹介しておきます。空爆で炎が上がっている画像は前回のものと同じのようだ。

イスラエル軍、ガザ空爆:2022年8月6日共同通信発

昨日、ガザ地区に関する記事を書きましたが、今現在のガザのニュースが入ってきています。日本のテレビでは何も報道していません。BSのNHKではカタールのアルジャジーラの局がこのことを報じていました。インターネットで共同通信社のサイトから紹介しましょう。2022/8/6 09:45 (JST)の発信です。

【カイロ共同】イスラエル軍は5日、パレスチナ自治区ガザで、過激派「イスラム聖戦」を標的に攻撃を実施したと発表した。ガザ保健当局によると、空爆により5歳の女児を含む10人が死亡、75人が負傷した。イスラム聖戦は司令官が死亡したと明らかにし、反撃すると表明。ガザからイスラエルに多数のロケット弾が発射された。イスラエル軍は対空防衛システム「アイアンドーム」で撃墜するなどし、イスラエル側の人的被害は伝えられていない。大規模な戦闘に発展することが懸念される。イスラエル軍が1日、占領するヨルダン川西岸北部ジェニンでイスラム聖戦幹部を拘束し、緊張が高まっていた。
日本の新聞では記事になっていないが、世界中で緊張が高まっている毎日です。

バイデン大統領の中東訪問・成果なし

バイデン米大統領が中東を訪問しました。一番の目的はサウジアラビアを始めとしてアラブ産油国に原油の増産を要請することでした。結局、軽くいなされた感じでしたね。産油国側は後日開かれるオペック+で話し合うとして、色よい返事はもらえなかった。エネルギー問題が深刻なことは周知の通りであるが、産油国側も「はい、わかりました。増産いたします。」というわけはない。現状の原油高で彼らは潤っているのだから。一方で、原油を売りたくても制裁が科せられているために西側諸国には売ることができずにいるイランのような国もある。日本はイランとは敵対していないにも拘らず、米国の同盟国であるがゆえに輸入を控えている。そのような無益な制裁を科していると今回噂になっているようにイランがロシアにドローンを輸出するように、接近していくことになってしまう。元々、ロシアはイランにとって潜在的な脅威国である。何度も苦い汁を飲まされてきた国である。

冒頭の新聞の画像は「パレスチナ和平に進展なく」とタイトルをうっているが、今回のバイデンの訪問はそれが目的ではない。ロシア、中国、イランの包囲網を敷くことに協力を要請することでもあった。イスラエルとは「イランの核兵器保有阻止のため、あらゆる力を行使する」という宣言をすることができたが、GCC(アラブ湾岸諸国)との間ではそのような宣言には至らなかった。バイデンは成果を得られず帰国の途についたのであった。米国のような大国が世界のリーダーとなりたいのなら、ウクライナに武器を供与して戦争を拡大させるのではなく、戦争終結に向けての行動をとるべきではないのか。とにもかくにも世界の食料不足、エネルギー不足、物価高を押さえるには戦争終結が第一と思うのだが。

安倍元首相が銃撃に死す

昨日、安倍元首相が銃弾に倒れ、死去されました。世界中でそのことが報じられ、彼の生前の業績を伝えていました。サウジアラビア、トルコ、イランの紙面の画像を紹介しておきます。

元首相のご冥福をお祈りいたします。

イスラム女性の服装

色々なメディアでアフガニスタンのテレビの女性キャスターが復帰したことを伝えていた。発信元は共同通信だ。中日新聞の6月7日にもその記事がでていた。

タリバン政府の勧善懲悪省が顔を覆わずに出演していたロマ・アディルさんを降板させるよう命令を出し、テレビ局もそれに従ったのであったが、本人の強い意志の下でテレビ局が彼女を復帰させたというのである。イスラム社会における女性の服装は国や地域により差がある。アフガニスタンではスカーフのように頭を隠すだけではなく、顔全体を覆うのが一般的である。今回の彼女の行為に対してアフガニスタンでは勧善懲悪省の命令を支持する声もあるし、彼女の行動を支持する声もある。国際社会では彼女を支持する声の方が多いだろう。タリバン政権が今後彼女に対してどのように手に出るのか国際社会は注目することになるでしょう。

昨年11月にこのブログではコーランの第4章「女性」を取り上げたことがあります。この章はかなり長い章であり、女性が相続する場合のことなどが事細かく書かれていましたね。そして、女性の章というのですが、服装については書かれていませんでした。そこで、イスラム女性の服装については、コーランでは何処の章にどのように書かれているのでしょうか?

答えは第24章第31節です。
「慎み深く目を下げて、陰部は大事に守っておき、外部に出ている部分は仕方がないが、その他の美しい所は人見せぬよう。胸には蔽いを被せるよう。」このような記載があります。井筒俊彦先生の訳本からの引用ですが、外部というのはおもてとフリガナを打っています。顔の部分は外部になるので「仕方ない」部分になるのではないでしょうか。となると顔は隠さなくても良いという解釈が成り立ちそうです。問題は次の部分「その他の美しい所」です。女性の顔を美しいと感じる人は多いでしょう。男たちが虜になる美しいものだと言えるかもしれません。そうすると隠しておかなければなりません。でも、その程度の記述なので色々な解釈が国によって異なるのでしょうね。今度改めてイスラム女性の様々な服装について取り上げてみたいと思います。

 

重信房子(日本赤軍元最高幹部)出所

5月8日に重信房子のことを書きました。その彼女が20年の刑期を終えて、28日に出所しました。中日新聞の記事を紹介いたします。

写真に写っている本人の左にいるのが先般紹介した『アラブの春の正体』の著者である娘のメイさんです。私たちの世代は大学時代は紛争に明け暮れた時代でした。3年次以後は休講になることも多く、ある者は学生運動に走り、ある者はノンポリを決め込んで、これ幸いと遊んだものでした。大学を卒業して3年目の1971年にイランに赴任した私にとって、同じ中東のテルアビブで1972年に岡本公三が小銃を乱射して数多くの人を死傷させてたことはショックな事件でした。日本赤軍は上の新聞記事に書かれているように複数の大事件を起こしました。重信房子は日本赤軍の最高幹部だったのです。あれから50余年が経ち、時代は変わりました。重信は逮捕された後に日本赤軍の解散を表明しましたが、赤軍のメンバーだった者達が消滅したわけではありません。今なお、7名が国際手配されています。


次の記事は重信のメディアの質問に対する回答の一部です。読んでみてください。

イスラエルのパレスチナ占領を、ロシアのウクライナ侵攻と重ねて、ダブルスタンダードであると語っています。考えさせられることがないわけでもありません。良くないことではないとはっきりしていることでも、止められない現実がこの世には山ほどあるのです。地球人の劣化が進んでいます。
日本も同様です。特に日本の政治家の劣化、品格の欠如は残念です。政府が胡麻化したり、改竄したり、黒塗りで隠蔽する風潮は、一流企業にも波及しています。有名企業での不正行為が次々と明らかになっても反省の色もない時代に成ってしまいました。重信房子の出所に伴い、色々考える1日でした。

 

エジプトのパン騒動:ロシア・ウクライナ戦争の影響

上の画像は MIDDLE EAST MONITOR の少し前の記事の写真です。記事の内容の一部を要約して抜粋すると以下の通りです。

パンデミックと世界のGDPの3.60%の縮小の影響で国際経済がうめき声を上げている間、エジプトは2020年と2021年の両方で3%を超える世界記録の成長率を祝いました。
コロナウイルスの攻撃に続くウクライナに対するロシアの戦争は、この経済成長を打ち砕くようになりました。それはエジプトの観光業に大きな打撃を与えました。また、小麦と石油の価格の上昇のために耐え難い財政的圧力がかかるようになりました。

エジプトは原油と石油派生物の純輸入国であり、年間1億2000万バレル以上の原油が輸入されています。過去数年間、政府は1バレルあたり約61ドルの石油価格予算を起草しました。世界のバレル価格が120ドルを超え、これが150ドルを超える可能性があると予測されているため、エジプト政府は予算の割り当てを2倍にする必要があります。

もう1つの打撃は、小麦と食料の価格です。エジプトは世界最大の小麦輸入国であり、2021年に1160万トンが国内に持ち込まれました。エジプトの供給大臣、アリ・モセリ氏は、政府は小麦の価格を1トンあたり255ドルと想定しましたが、現在は350ドルを支払っています。残念ながら、エジプトの輸入の86%は、ロシアとウクライナの2つの戦争国からのものであるため、問題はここで止まりません。

政府がすでに継続的な物価上昇、賃金の凍結、補助金の撤回で人々に負担をかけていたときに打撃が来ました。政府は、電気、水、燃料の補助金をほぼ廃止し、食糧補助金の価値と受益者数を削減しました。また、重量を減らした後、補助金付きのふすま(バラディ)パンの価格が上がることになりました。

4月7日のこのブログにウクライナとロシアの戦争が中東の小麦の供給に大きな打撃を与えていることを書きましたが、いまエジプトではその影響がパンの価格に現れてきたわけです。各地でデモが起こり、政府に抗議する運動が広がっているということです。エジプトでは過去何度もパン騒動と呼ばれる動きで政府が揺さぶられた歴史があります。今回のウクライナの戦争の影響が世界各地に影響を及ぼし、それが拡大しつつあることが目に見えるようになってきています。早く、終結してほしいものです。