前回、アケメネス朝はアレクサンドロス大王によって滅ぼされたと書いた。次のテーマに移りたいところであるが、ナクシェ・ロスタムについて書き残しておきたい。ナクシェとは絵、ロスタムとはペルシアの伝説物語の英雄の名前である。英語で表記するとNaqsh-e-Rostam ペルシア語でنقش رستم である。ここはペルセポリスから北へ約4kmほどのところにある王族の墓が並んでいる場所である。ビストゥーンの磨崖碑と同じように垂直に立っている岩山の壁面に造られている。墓は4つ並んでいるのだが、左の3つから少し離れた右の方に1つが少し左の方を向きかげんで並んでいる。一番左からダレイオス2世、アルタクセルクセス1世、ダレイオス1世、クセルクセス1世の順番である。前回の王の系図をみれば4人の関係がわかるであろう。
最初にここを訪れたのは1972年であったと思う。自分も二十代であった。その時には誰もいなくて、このような歴史的遺産に対する取り扱いに驚いたものだった。あれから何度も訪れた。日本から来訪者が来る度にイスラハンとペルセポリスを案内したついでにここにも来た。いつからか入場料(といっても囲いがしてあるわけでもないが)を徴収する人がいるようになった。金額も大した額ではないが、一応、歴史的な遺産として扱われるようになった。いつ行っても晴天ばかり(これはイランなら北のカスピ海沿岸を除いてほとんどのところがそうであるが)。青い空に磨崖壁の遺跡が美しく映えるのである。