中東の石油(8):石油国有化以後

イランの石油事業が石油メジャーズの殆どのメンバーが参加したコンソーシアムによって運営されるようになったことを前回述べた。その後、1957年にイランの石油開発法が制定された。この法律はコンソーシアムの利権地域以外でNIOC(国営イラン石油会社)が外国石油会社との合弁により、石油開発を進めることを認めたものであった。まず、1957年8月にイランの沖合大陸棚の油田開発のためにSIRIPが設立された。この合弁会社のパートナーはイタリアの国有炭化水素公社(AGIP)であった。ついで、1958年4月にはスタンダード石油インディアナ社の子会社パン・アメリカン石油会社との合弁会社IPACが設立された。これら2社の契約方式は「利権供与合弁事業方式」というべきものであった。NIOCは合弁会社の半分をシェアしているために、利益の50%を得ることができた。一方、外国側のパートナーも利益の50%を受け取るが、イラン政府はその取り分に50%の所得税をかけることができたのであった。つまり、イラン側は利益の75%を受け取ることができるという内容であった。これを契機に、同様の条件による合弁会社の設立が相次いだ。それらはDEPCO, IROPCO, IMINOCO, LAPCO, FPC, PEGOPCO,などであった。この75%対25%という利益配分は周辺産油国における利権協定の条件にも大きな影響を与えていった。

さらに、1966年には新方式の「請負作業契約」がNIOCとフランス国営石油会社ERAPとの間で締結された。この新しい契約は外国の石油会社に利権を与えるのではなく、単なる請負者として石油を開発させるものであった。請け負ったERAPはNIOCの計画、指示によって契約地域内の探鉱と開発に従事するが、ERAPは探鉱・開発の技術と必要な費用は自らが負担し、たとえ油田開発に失敗しても費用は返ってこない。もし、成功すれば探鉱費は無利息借款となり、商業量石油の生産開始後15年間で返済されるというものであった。また、開発費もイランに対する借款となり、こちらは5年以内に、フランスの銀行の現行利息に2.5%を加算した金額相当を返済するというものであった。このように、NIOCはコンソーシアムの協定地区以外で新方式により、より良い条件の下で石油開発を推進していった。これらの合弁会社による石油開発の実績は実は大きなものではなかった。しかし、石油会社との契約条件を改善していったことが、産油国側にとっては大きな成果であった。この方式はイラクやサウジアラビアに波及していったのである。