ムスリム(イスラム教徒)が信じなければならない6つのことと、実践しなければならない5つのことを合わせて「六信五行」という。言い換えれば、これがイスラムの教えと言ってもいいだろう。今回はその中の「六信」を取り上げよう。6信を上のような図にしてみた。
1.アッラー :神である。唯一絶対の神・・・・ほかに神はいない。
2.天使 :アッラーと地上との間をとりもつ。コーラン第35章1節「讃えあれアッラー、天地の創造主、天使らを使者に立て給う。その翼は二対、三対、または四対。数を増して創造なさるは御心のまま・・・」アッラーは天使を思いのままに創造できると書かれている。ムハンマドにアッラーの啓示を伝えた天使ジブリールは天使の中でも位の高い天使である。キリスト教で受胎告知を伝えたとされる天使ガブリエルのことである。
3.啓典:コーランである。福音書をもつキリスト教、詩篇と律法の書をもつユダヤ教、コーランを持つイスラム教はいずれも天啓の書をもつために、これら三者は同一のカテゴリーにはいるものとされ、啓典の民という。
4.使徒(あるいは預言者):文字通り神の言葉を預かり、人々に伝える者のこと。イスラムではムハンマドがそうである。が、面白いことにユダヤ教やキリスト教のモーゼやキリストもイスラム教の預言者なのである。イスラムからみた預言者の系譜が次図である(自由国民社『中東』より引用)。
5.最後の審判:審判の日があり、生前の善行・悪行により天国・地獄に別れる6.天命(神の予定):この世のすべてのことは神が定めた予定にそって展開。
これは私自身の思うところなのですが、ムハンマドはユダヤ教やキリスト教の延長線上にイスラムを作り、過去の2つを再構築しようとしたのであろう。ノアやアブラハムやモーセやキリストたちもイスラム側でも崇められるべき預言者となっている。ノアの洪水伝説など聖書にでてくる物語もコーランには現れる。もっとも洪水伝説はメソポタミア時代の粘土板にも記載されている物語ではある。ムハンマドが山で瞑想に耽っていたときに、啓示を伝えようと天使ジブリールが現れて「読め!」と言われたとき「私は読めません!」と答えたという。そのことから、ムハンマドは読み書きができなかったということなのであるが、彼自身はユダヤ教やキリスト教について非常に多くの知識を持っていた教養人であったのであろう。と私は思うのである。